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中小企業の自社サービスのマーケティングは非常に難易度の高いプロジェクトだと日々感じます。もちろん様々な分析をした上で取り組みを決めたいけど、それには費用も時間もかかる。とはいえ施策から初めた場合は当たり外れの要因も、どう改善したらいいかも不明なままです。私自身もプロジェクトに参画しながらそのような壁を感じることもございます。そういった背景も考慮しながら、これまでマーケティングプロジェクトを行う中での考え方の整理として本記事を作成いたします。中小企業、および小規模プロジェクトのマーケティング活動の一つの方法としてご活用いただけたら幸いです。製造業×BtoCでの支援経験をベースにしていますが、思考の流れをまとめているだけですので他の業態にもご活用いただけるかと思います。
1.上から下へ流していると「ヒトモノカネ」が枯渇する。
顧客獲得を目的にマーケティング戦略を考えるにあたって分析は欠かせません。しかし、そこから始めた場合のプロジェクトのスピード感およびコストを考慮して進めることができる企業は多くないと感じています。長期的な戦略を見ながらも、成果と呼べる小さな成功体験は早めに収穫したい。そういった気持ちでご依頼いただくケースが多いように感じます。その際に一般的な戦略を決めるフローではどうしても進行できないことがあるのです。
一般的なマーケティング戦略の進め方
ここで一般的なマーケティング戦略の進め方として紹介される方法をみてみましょう。
まず施策を始めるのではなく、分析を行いながら、どういった戦略が考えられるか。さらにどういった戦術に落とし込んでいくかを検討していきます。
ここで一つ一つを詳細にご紹介すると本記事の趣旨からはずれますので、簡易的な記載に留めます。
※名称に英語が含まれるフレームワークは内包される要素の英訳頭文字の組み合わせとなります。
1.環境分析
環境分析は、企業のマーケティング活動に影響を与える外部および内部環境を評価するプロセスです。これには市場動向、競合状況、顧客の行動、経済状況、技術の進展、法規制などが含まれます。
■PEST分析: 政治、経済、社会、技術の視点から外部環境を分析。
■SWOT分析: 企業の強み、弱み、機会、脅威を評価。
■3C分析:企業、顧客、競合の評価。
2.戦略策定
戦略策定は、環境分析の結果に基づいて、企業の長期的な目標とこれを達成するための戦略を立案するプロセスです。これには市場セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング、バリュープロポジションの決定などが含まれます。
■STP分析: 市場をセグメント化し、ターゲット市場を選定し、適切な市場ポジショニングを行う。
■バリュープロポジション: 特定の顧客セグメントに対して、競合他社との差別化を図る独自の価値提案を明確にする。
3.戦術実行(マーケティングミックス)
複数の施策を組み合わせるのでマーケティングミックスと呼ばれるフェーズです。企業がターゲット市場にアプローチし、製品やサービスを効果的に提供するため、戦略を具体施策に落とし込みます。
■4P分析
製品,価格、流通、プロモーションに基づいて、製品やサービスを市場に効果的に提供するための施策を立案。
■4C分析
4P分析を顧客、コスト、利便性)、コミュニケーション顧客中心の視点に置き換えたもの。
2.中小企業だからできるプロダクトアウトにフィットした戦略策定
先ほどご紹介した一般的なマーケティング戦略ですが、正直中小企業で一番上から下までを細かくやっている企業を見たことがありません。(もちろんいるとは思います。それはなぜか。一つは先ほど議題に挙げた「コストとスピード」の観点です。中小企業のマーケティングプロジェクトにおいては長期的な戦略と短期の売り上げアップを並行して進める必要があります。中々タフなプロジェクトが多いですが、それでも必要な考え方です。
もう一つが多くの中小企業が「プロダクトアウト」であることです。製造業が多いということにも影響されているかもしれませんが、日本企業はプロダクトアウト型の企業が多いと言われております。これ自体は特に良し悪しがあるものではございません。しかし、環境分析から綿密にスタートし、製品開発を行うようないわゆるマーケットイン的なサービス開発は日本の多くの企業に合ってないのではと感じています。長年事業を継続してきたからこその技術を誇りをそう簡単に捨て去るのは難しいものです。新たなブランドを立ち上げたり、技術を応用した新たなサービス開発はあるかと思いますが、根本的に捨て去ったりということはないのかなと思います。
戦略策定から始めて、足りないところを環境分析で補う
そこで、本章冒頭でご紹介した一般的なマーケティング戦略の流れの一部を使いながら最低限のところから進めていきます。図とおおきく流れがわかる部分は「戦略策定」から始めて不足する部分を「環境分析」によって補っていくという戦略の作り方です。もちろん不備を抱えながらにはなりますが、分析をしたからといって完璧な戦略が出来上がるとは限りません。それであれは小さい範囲で仮説を検証し、改善をしていく。過去プロジェクトに参画する中でこういった流れで成果を出すケースが多くありました。
STP分析から始めることで最低限の分析だけで戦略をつくる
では戦略策定のどこから始めるのか。主にはSTP戦略と呼ばれるものを使います。市場を細分化し、どの市場を狙うのか、その市場でのターゲットは誰なのかといった項目をベースに考えます。kumuの事業説明資料をするときに下記のページがあるのですが、STPとは記載していないものの、限りなくイメージとしては近いです。
ここで大切なのは項目を埋めることに意識を持っていかれることなく、手触りのある顧客像を思い浮かべることだと思います。あくまでもフレームワークはその思考が主観的すぎないかを検証するツールです。我々も意識しないとそうなるパターンが多いのですが、使うのではなく使われるといった状況は避けたいですね。
とはいえSTPの観点だけだと「市場規模がわからない、そもそもあるの?」「このポジションを取った際の競合は?」などなどイメージしきれないことがたくさんあります。分からないことが分かってきてから分析に関するフレームワークを使うのです。環境分析は名前からも想像できる通り、自社だけでなく外部含めた環境を見ていくのですが分析の範囲が広くなりがちです。分析に多くの時間とコストを投下するのが難しい場合はまずはSTP分析から始めて足りないところを外部環境含めて検討していくのです。それによって戦略策定を大幅に効率化することができます。
ターゲットに何を価値として提案するのかを検討する
STP分析で市場そこにおけるポジショニングがイメージできたら、戦略策定はもう一息です。最後はSTPにも含まれている「ターゲット」の解像度をさらに上げていきましょう。一般的にはこの段階では「バリュープロポジション」というフレームワークが使われます。プロポジションとは提案。我々がサービスとして顧客にどんな価値提案ができるかというのを検討します。余談ですが、価値とはサービス提供者ではなくサービスの受け取り手が感じて始めて発生するものと言われています。サービス側で一方的に決めた価値「らしき」ものではなく、本来的に顧客が感じるであろう価値をこの段階で検討していきます。ここでの価値は綿密に喧騒しながらもあくまで仮説です。ブラッシュアップを前提に考えていきましょう。
時間と労力をかけて戦略を作ることの大切さ
一部を省略しながらとはいえ、戦略策定にはそれなりに時間と労力がかかります。なんせリサーチをしながら自社の資源と照らし合わせてそれが本当に実態のあるものなのかを検討するのですから大変な作業です。それでもこの段階は流石に省略することはできません。次章ではマーケティングミックスについて話していきますが、施策段階になると多種多様な取り組みが並行して進むことになります。そしてその施策ひとつとっても実現したり成果を出すには思ったよりも労力がかかります。
そのため、マーケティングミックスの段階で思いっきり施策に集中できるように戦略をつくりきることが大切なのです。チームでマーケティングプロジェクトに取り組む際に明確な戦略があれば、迷わず施策にのめり込めます。
もちろん戦略自体も随時更新していくものではありますが、そのようにチーム全体で成果を出すことを意識して戦略を作り上げていきましょう。
3.戦略策定とマーケティングミックスをつなぐための「CEP」と「オルタネイトモデル」を考える
ここにきて新たな概念を入れ込んでみました。安心してください、これから施策を立ち上げマーケティングミックスの段階に入っていくにあたって戦略との仲介役を果たしてくれる心強い味方です。ちなみにこの2つの概念、特にCEPに関しては環境分析で用いることもあります。今回はkumuとしての戦略立案を説明する際にこの立ち位置にしているという認識です。
では早速この2つの概念を噛み砕きながら、なぜ戦略と施策立ち上げの仲介役を果たしてくれるのかを説明していきます。
CEPとは?
CEPとは「カテゴリーエントリーポイント」ブランドを想起するきっかけともいえます。よくコカコーラなどが例に出されますが、コカコーラという一つのブランドの周辺には「暑いときに飲みたい「(子供が)おやつの時間に飲みたい」「さっぱりしたものを飲みたい」「ハンバーガーとセットで楽しみたい」など想起するにあたって様々な入り口があります。ちなみに私は高校生までサッカーとしてたのですが、ナイキは完全にサッカーブランドだと認識していました。しかし当たり前ですがナイキは男女のライフスタイル用品も扱っていますし、サッカー以外のスポーツ用品も多く取り揃えています。ナイキのCEPの一つにサッカーがあり、そこから流入したのが過去の自分自身だったなど思い出しました。ブランド内における商品群やターゲット層の幅、コラボレーション先が多くなればなるほどCEPの数は増えていきます。
オルタネイトモデルとは?
オルタネイトモデルは先ほど検討したCEPの一つ一つを検証してくためのツールとして使用しています。顧客の「きっかけ・行動・欲求・抑圧・報酬」といった心理状況を整理し、実際の購買フローに落とし込んでいきます。詳しくは芹澤連さん著書の「未顧客理解を呼んでいただくとより深い理解が得られかと思います。
なぜこの2つをこのタイミングで導入するのか
この2つの考え方は環境分析で用いることも、戦略策定の初期段階でも使うことがございます。しかし、あえてこのタイミングで使用することが多いのには理由がございます。それは戦略と戦術の境界線をなくすのに非常に有用だからです。戦略策定段階でSTP分析を行っても施策にどう落とし込んでいくの?どの点を意識したらいいの?となるケースが私自身多々ありました。そういった中で戦略策定段階での内容をもとに、ではどういった入り口があるのだろう。それを顧客の心理状況と照らし合わせるとどういう見え方になるのだろうといった具体像までをイメージすることでより詳細な施策に落とし込めることが増えました。顧客獲得を目的にする戦略でありながら、顧客の心理状況をイメージするというのは当たり前ではあるのですが、意外と抜け落ちることが多いのも事実です。
4.大切なのは「目標」を共有し「チーム」で進める状態になること
今回はこれまで関わって成果が出始めているプロジェクトをベースに体系化してみようという試みで記事を作成してきました。しかし、正直このようにきっちりとフレームワーク通りプロジェクトを進める例はあまりありません。正確にいうとこのフレームワークではこれを考えて、次の段階ではこれを考えて、、というような流れではなく、全てグラデーションのように行き来しながら作り出しているということです。フレームワーク自体は初めて聞いたものがあったとしても、普段から事業やマーケティングに関して思考を巡らせている方からしたらある種当たり前のことをまとめている気もします。参考程度でいいと考えています。それよりも大切なのは分かりやすくワクワクする「目標」が設定され、そこに「チーム」として取り組める状態になることではないでしょうか。サービスを多くの人に届けるためには一人の力ではできません。だからこそ多くの人に共有され、かつ巻き込めるような戦略を描ければ別にフレームワークなんて使わないときもあります。
続けるための伴走支援を行なっています
長々と書いた挙句に最後にはフレームワークなんていらない時もあると書いてしまって恐縮ですが、実行に勝るものはないと考えています。実行を継続し、見直し、成果を出すための戦略です。ただ、この戦略自体をどう描いたらいいかわからないケースも多くあると思います。kumuではそういった企業や、プロジェクト担当者と共に戦略をつくるところから実際の戦術実行/改善を伴走させていただきます。もしお力になれそうでしたらお声掛けいただけたら嬉しいです。
【サービス内容をさらに知りたい方はこちらより資料ダウンロードいただけます】