ECサイトを運営していて、「アクセス数は増えているのに売上がなかなか伸びない」と感じることはありませんか?
その原因は、コンバージョン率(CVR)の低さにあるかもしれません。CVRは、ECサイトの成功を測る最も重要な指標の一つです。
この記事では、ECサイトのCVRについて基本から応用まで詳しく解説し、中小企業のEC運用担当者が今すぐ実践できる改善施策をご紹介します。
CVRのの基礎知識
CVR(コンバージョン率)とは、サイト訪問のうち、「商品の購入」「会員登録」「問い合わせ」などの最終成果に至った割合のことです。ECサイトにおけるCVRは、サイト訪問数における商品購入数の割合を指し、以下の式で計算できます。
CVR = コンバージョン数(商品購入数) ÷ セッション数(サイト訪問数) × 100(%)
例えば、月間のサイト訪問数が10,000セッションで、そのうち商品を購入したのが200人だった場合、CVRは200 ÷ 10,000 × 100 = 2.0%となります。
多くの分析ツールでは、ウェブサイトを訪問した機会を「セッション」と呼び、訪問した個人を「ユーザー」と呼びます。CVRの計算には、ユーザー数ではなく、期間内の注文数とセッション数を使用します。

CV率が1%改善されると売上は倍になります。この大切な指標を少しでも改善するにはどんな手法があるのかを見ていきましょう。
平均的なCVRの目安
ECサイトの運営者が最も気になるのは、「自社のCVRは他社と比べて高いのか低いのか」という点でしょう。ECサイトの平均CVRは1%〜2%と言われていますが、業界や商品カテゴリによって大きく異なることを理解しておく必要があります。
業界別の特徴
美術工芸品(4.01%)、ペットケア(3.53%)、産業用エレクトロニクス(2.70%)では、比較的CVRが高くなっています。これらのジャンルは、専門性が高いこと、ユーザーが他のチャネルでも情報を集める傾向が高いことが影響しているようです。
一方で、飲料・食品ECサイトは競争が激しくなりがちです。ユーザーも多くのECサイトを並行して使いますので、CVRは低くなりますという特徴があります。
ベンチマークとしての活用
ただし、平均値はあくまで参考値として捉えることが大切です。
自社のビジネスモデル、商品単価、ターゲット顧客によってCVRは大きく変わります。重要なのは、自社の過去の数値と比較して改善傾向にあるかどうかを継続的に監視することです。
ECサイトでCVRが低い原因を考える
CVRが低い原因は複合的ですが、主に以下の4つのカテゴリーに分類できます。それぞれの原因を具体的に見ていきましょう。
UX(ユーザー体験)の問題
ユーザーがサイトを使いにくいと感じると、購入意欲があっても離脱してしまいます。特に深刻なのは以下の問題です。
サイトの表示速度が遅い
実際にデータでは、3秒以上表示にかかる場合は、40%もの人が離脱していくことがわかっています。他にも79%もの人は、ページの表示速度が遅いと感じた時には、2度と不満を持ったサイトで買い物を行わないというデータもあるという調査結果があります。
ページ表示速度の平均は2秒以内に表示されることが理想と答えるユーザーが多かったため、2秒を超えると多くのユーザーが離脱してしまう可能性があります。
ナビゲーションの複雑さ
商品を見つけにくい、カテゴリー分けが分かりにくい、検索機能が使いづらいなどの問題は、ユーザーの購買行動を阻害します。
弊社がサポートした企業でもECのナビゲーション改善で大きく売り上げが改善された事例もございます。
商品ページの情報不足
ECサイトでは商品を実際に手に取って確認できないため、商品ページの情報が購買決定の重要な要素となります。
写真の質と数 商品の魅力を伝える高品質な写真が不足していると、ユーザーは購入を躊躇します。様々な角度からの写真、使用シーンの写真、詳細部分の写真など、十分な情報を視覚的に提供することが重要です。
商品説明の充実度 サイズ、材質、使用方法、注意事項など、購入判断に必要な情報が不足していると、ユーザーは不安を感じて離脱してしまいます。
レビューや評価の活用 他の購入者の実体験は、購買決定に大きな影響を与えます。レビュー機能がない、またはレビュー数が少ないと、商品への信頼度が下がります。
単価と送料の関係性
オフラインでの購買とECでの購買で大きく異なるのは送料の存在です。
単価が低い金額ほどユーザー目線での送料の負担度合いが大きくなるためこのバランスが悪いとカート追加からチェックアウト画面での離脱率が非常に大きくなってしまいます。
ショップの上部に送料無料までのカウント表示を入れたりなどの対応を行うことで離脱を防ぐことが可能です。

ECサイトのCVR改善施策
CVRの低下原因を理解したところで、具体的な改善施策を見ていきましょう。以下の5つの施策は、多くのECサイトで効果が実証されています。
1. 購入フローの最適化(フォーム・ページ速度)
フォームの簡素化
購入手続きのフォームは、必要最小限の項目に絞ることが重要です。入力項目が多すぎると、ユーザーは途中で離脱してしまいます。また、入力エラーがあった場合は、分かりやすいエラーメッセージを表示し、ユーザーが簡単に修正できるようにしましょう。
ページ速度の改善
Amazonでは表示速度が0.1秒遅くなると売上が1%減少するという有名なデータがあります。画像の圧縮、不要なプラグインの削除、CDNの活用などにより、ページ読み込み速度を改善しましょう。
2. 商品ページの改善
商品写真の充実
商品の魅力を最大限に伝える写真を複数枚掲載しましょう。正面だけでなく、側面、背面、使用シーン、詳細部分など、ユーザーが知りたい情報を視覚的に提供することが重要です。
レビューシステムの充実
購入者のレビューは、商品への信頼度を高める重要な要素です。レビューの投稿を促進し、写真付きレビューにはポイント付与するなどのインセンティブを設けることも効果的です。
商品説明の最適化
商品の特徴、使用方法、サイズ、材質など、購入判断に必要な情報を分かりやすく整理して掲載します。また、よくある質問をFAQ形式で掲載することで、ユーザーの不安を事前に解消できます。
3. 決済方法・返品保証
決済方法の多様化
クレジットカード以外にも、代金引換、銀行振込、電子マネー、後払いサービスなど、ユーザーのニーズに合わせた決済方法を提供しましょう。特に高齢者や現金派のユーザーには、代金引換の選択肢は重要です。
ポリシー関連
明確な返品・交換ポリシー 返品・交換の条件、期限、手数料などを明確に示すことで、ユーザーの購入に対する不安を軽減できます。可能であれば、返品送料無料や、試用期間の設定なども検討しましょう。
4. クーポン・リターゲティングなどのマーケティング施策
限定オファーの活用
初回購入割引、期間限定セール、送料無料キャンペーンなど、購買を促進するオファーを戦略的に活用します。ただし、常時セールをしていると、ユーザーがセール時でないと購入しなくなるため、メリハリをつけることが重要です。
リターゲティング広告
一度サイトを訪問したユーザーに対して、見た商品や関連商品の広告を表示することで、再訪問と購入を促します。特にカートに商品を入れたまま離脱したユーザーには、効果的なアプローチです。
パーソナライズ機能
ユーザーの閲覧履歴や購入履歴に基づいて、おすすめ商品を表示する機能を導入します。これにより、ユーザーが興味を持ちそうな商品を効率的に提案でき、CVR向上につながります。
改善を始める前にやるべき分析
CVR改善施策を実行する前に、現状を正確に把握することが重要です。闇雲に施策を打つのではなく、データに基づいて問題点を特定し、優先順位をつけて改善に取り組みましょう。
カート投入率とカート離脱率の把握
ECサイトのCVRを詳しく分析するためには、購買プロセスを段階的に分解することが重要です。一般的なECサイトでは、以下の流れで購買が進みます。
- サイト訪問 → 2. 商品閲覧 → 3. カート投入 → 4. 購入手続き → 5. 購入完了
カート投入率の目安 カート投入率は5%くらいが大体平均値ではないかと考えられています。この数値が低い場合は、商品ページの改善や商品の魅力をより効果的に伝える施策が必要です。
カート離脱率(カゴ落ち率)の深刻さ ECサイト上でのカゴ落ち発生率は、約65%から70%と言われています。
この数値は、カートに商品を入れた10人のうち、実際に購入するのは3人程度という意味です。カゴ落ちを通じて発生する機会損失額は売上の約2.0倍にものぼるとされていますため、カート離脱率の改善は非常に重要です。
カート離脱の主な原因 53%のユーザーが「送料、税金、手数料など、商品の料金以外のコストがかかるから」を上げています。その他、以下のような原因があります:
- 会員登録の強制
- 決済方法の選択肢不足
- サイトのセキュリティへの不安
- 購入手続きの複雑さ
- 配送期間の長さ
ヒートマップやGAでの行動分析
Googleアナリティクスでの基本分析 Googleアナリティクス(GA4)を使用して、以下の指標を定期的にチェックしましょう:
- ページ別の離脱率
- デバイス別のCVR
- 流入元別のCVR
- 商品カテゴリ別のCVR
- 購入フローでの離脱ポイント
ヒートマップツールの活用 ユーザーがページのどの部分をよく見ているか、どこでクリックしているかを視覚的に把握できるヒートマップツールを活用します。これにより、ユーザーの行動パターンを理解し、より効果的な改善施策を立案できます。
ユーザーテストの実施 実際のユーザーにサイトを使ってもらい、購入プロセスでどのような問題に直面するかを観察することも重要です。内部の人間では気づかない使いにくさや疑問点を発見できます。
まとめ:ECサイトのCVR改善は小さな工夫から始めよう
CVR改善は、ECサイト運営において継続的に取り組むべき重要な課題です。一度に大きな変更を加える必要はありません。まずは現状を正確に把握し、データに基づいて優先順位の高い問題から順番に改善していくことが重要です。
今すぐ始められる基本施策
- Googleアナリティクスでカート離脱率を確認する
- ページ表示速度をPageSpeed Insightsで測定する
- スマートフォンでの購入フローを実際に体験してみる
- 商品写真を見直し、必要に応じて追加撮影する
- レビュー機能がない場合は導入を検討する
中長期的な改善計画
- A/Bテストツールの導入
- ヒートマップツールでのユーザー行動分析
- 決済方法の多様化
- パーソナライズ機能の実装
- カゴ落ちメール配信システムの構築
CVR改善は地道な取り組みですが、確実に売上向上につながる投資です。ECサイトの平均CVRは1%〜2%と言われていますが、継続的な改善により3%、4%と向上させることは十分可能です。
まずは自社の現状CVRを正確に把握し、業界平均と比較しながら、改善の余地があるポイントを特定してください。そして、ユーザー目線に立った改善施策を一つずつ実行していくことで、必ずCVRの向上と売上アップを実現できるはずです。
小さな工夫の積み重ねが、大きな成果につながります。今日から始められる改善施策を選んで、CVR向上への第一歩を踏み出しましょう。