
ユーザーを巻き込む、B2Cブランドのファンコミュニティ形成
広告予算が多くは確保できない中小企業のブランド戦略において、ユーザーを巻き込みながらブランド成長を行うことは重要な観点です。
本質的に価値のあるプロダクトやサービスの場合、UGC施策やコミュニティ施策に展開できます。
また開発段階からユーザーを巻き込むことで社内だけでなく、外部からのフィードバックを得ることができるなど、リソースが限られる中小企業においては挑戦してみる価値があるかと感じています。
数値で測れる以上の効果が望める取り組みですが、ここからは実際のファンコミュニティ形成の効果とどういう手順で取り組んでいくのかをお伝えしていきます。
ファンコミュニティにおける効果とは
まずはファンコミュニティというもの自体の効果を売上やブランド認知の観点から話していきたいと思います。
特徴としては2点です。
・プロダクト / サービスのLTVアップ
・UGC活発化
プロダクト / サービスのLTVアップ
こちらに関してはイメージしやすいかと思います。LTVは一般にこのように説明されます。
LTVとは「ユーザー生涯価値(Life Time Value)」の略称であり、あるユーザーが自社の利用を開始してから終了するまでの期間に、自社がそのユーザーからどれだけの利益を得ることができるのかを表す指標です。 例えば、あるユーザーとの取引が1回で終わってしまう場合よりも、2回目以降も取引が継続した場合の方がLTVは高くなります。
つまり、ユーザーでいる間に何回リピートしてくれるのかといった指標です。マーケティングの一般的な理論から考えると既存ユーザーからのリピートよりも新規ユーザーの獲得の方がコストが嵩張ることを考えるとリピート施策にファンコミュニティが寄与するのは理解しやすいかと思います。
UGC活発化
もう一つは「UGCの活発化」です。
UGCは、ユーザーの手によって制作・生成されたコンテンツの総称です。SNS、ブログ、動画投稿サイト、写真共有サイト、イラスト投稿サイト、電子掲示板(BBS)、プロフィールサイト、Wiki、ソーシャルブックマークなどの各種ソーシャルメディアに書き込まれたり投稿されたコンテンツや、それらに対する感想、レビューなどのコメントも含まれます。
分かりやすいところで言うと口コミ等が当てはまりますが、こういったコンテンツは思った以上の効力を発揮します。マーケティングという目線で扱うと少し胡散臭いですが、実際に自分の生活に落とし込んだ時に家族や親友がオススメしてくれたものってしぜんと信頼してしまいませんか?
そのように企業からの発信だけでなく、ユーザー自身がブランドのファンになってくれてかつ、そのブランドの発信をしてくれることでブランドの価値が多くの人に伝播していきます。
上記2点はファンコミュニティにおける一部分を切り取ったものに過ぎませんが、それでも十分価値がある取り組みだと感じていただけたかと思います。
また、後述しますが売上の観点以外にもユーザーとの関係性が近くなることで製品の品質にも大きく影響していきます。
次は中小企業の要である製品開発の話をお伝えいたします。
ユーザーの顔が見えることが、品質を高めるきっかけに
わたし自身、これまで製造業でOEMであったり、卸売業が多いクライアントの方々と仕事をすることが多かったため、こういった気づきを得ることができました。
そもそもの前提なのですが、先述したような業態だと基本的にはエンドユーザーとのコミュニケーションは発生しません。そのため、リアルなユーザーの声という観点では中々フィードバックを得難い状況にありました。
副次的にですが、ファンコミュニティはこういった製品の品質向上という点でも効果を発揮します。実際にコミュニティ内で試作品を使っていただきフィードバックを得る。開発側からしたらリアルな声を聞けるという良さがありますし、ユーザーからしたらファンであるブランドの開発に携わっている喜びも感じていただけるかと思います。
もちろんいただいたフィードバックを全て反映する必要はございません。
ユーザーのフィードバックを元に抜本的な解決を提供することでさらにブランドに対する信頼感や愛着が深まっていくでしょう。こういった技術や表現の深堀は中小企業が常日頃行っている部分です。習慣化されたものがユーザーとのコミュニケーションにおいて大きな価値を発揮します。
このように数値的に売上には換算されないものの、プロダクト / サービスの品質というブランドの根幹を担うものの質を高められるという点ではファンコミュニティは非常に意義のある取り組みではないかと感じています。
共に作り上げるという体験価値
これまでは主に開発側からの視点でファンマーケティングを語ってきましたが、本筋である「ユーザーからみたらどうなのか」という視点で掘り下げていきます。
みなさん実際に自分が好きなブランドの開発や成長に携われると思ったらワクワクしませんか?
これまでは社内の担当者がマーケティングなどの分析を元に製品開発に至っていたものが、開発の段階からユーザーである自分達が関われる、そういった体験価値を提供できるのがファンマーケティングの本筋だと感じています。
従来の開発側主導から、ユーザーも巻き込み共創していく。それぞれの視点と、意見を織り交ぜながら新たな価値を作っていく、そういったこれまでにない成長戦略を描けます。
製品の品質がジャンル関係なく高水準になった今、これまでの既製品を売るという一方通行の時代から、そもそもの枠を一緒に作り上げていこうというフラットなものづくりの可能性を感じます。
生きていく上でのマイナスは限りなく少なく、自己実現が次の欲求になってくる。
そういった概念の変化から、ブランド関与を皮切りにユーザー自身もさらなるブランドとの関係性を築いていくのかと思います。
ブランドに「関わり代」を組み込む
とは言っても何もせずユーザーがブランドに対して能動的な姿勢を示してくれるわけではございません。手法はそれぞれですが、ユーザーが関わりたくなるような施策を考えることが求められます。
多くのブランドが「共創」という言葉を用いてユーザーとコミュニケーションを図ろうとしますが、実際に自分がユーザーの立場に立った時に関わり方が分からない状態だと何をすればいいか分かりませんよね。
その際に考えていただきたいのが「ブランドの関わり代」です。
趣向の要素が強いプロダクトであればマニアのような人から意見をいただきながら開発することもできるでしょうし、逆に日々消費するような食料品であればユーザーにレシピを募りながらゆるい関係性を築くことも可能です。
その際に必要なのが自分達のプロダクト(サービス)はどんな人が好きになってくれるのだろう、どういう関わり方だと楽しんでもらえるのだろうと考えることが必要になってきます。
マーケティング業界には「ペルソナ」という概念がありますが少し近しいものかもしれません。
自分達の特徴と、受け取ってくれる相手方の顔をイメージすることで本当にファンになってくれる人を考えていきます。
クラウドファンディングであったり、SNSであったりユーザーの方々と繋がる手法は世の中にたくさんございます。商品特徴をしっかりと理解した上で手法を活用することで相性のいいユーザーと繋がることができます。
実際にこうした繋がりが増えることでユーザー自身がブランドの口コミをしてくれたり(UGC)、開発に関与したプロジェクトであれば自ら広報を行ってくれたりと、関係性がグラデーションのように移り変わり、各々の立場でブランドを成長させるような状態になってきます。
中小企業は密接な関係性作りで優位性を持てる
もちろんファンとなってくれたユーザーや、そもそもファンになってもらうために多くの手数を費やしたり、細かい試行錯誤を繰り返すので簡単な取り組みとは言い難い側面もございます。
しかし、作り手の顔が見えたり、中小企業ならではのフットワークの軽快さでお互いの距離感を詰めていくことは可能なのではないかと実際に施策を実施する中で感じます。
また、技術力の高さが根底にあるのでファクトリーブランドの信頼感はかなり高いと感じるので、そういった形態に関心を持つ方々とのコミュニケーションもより活性化されるといいなと思います。
よくsnsやインターネットのおかげで中小企業も自社ブランドを立ち上げやすくなったと耳にしますが、個人的には環境は整っているがそこでの立ち回り方はまだまだ改善の余地があるなと思います。
もちろんファンコミュニティはその中の一つの施策に過ぎません。
しかし、プロダクトに価値があるブランドであればあるほどそこに魅力を感じ、背景に作り手が見える状態というのは中小企業ならではの体験ではないかと個人的には思っています。
単純に売り手買い手ではなく、お互いの立場を活かしながら自分達が共感できるものを共に創っていくような取り組みは中小企業のB2Cブランドの施策において大切な取り組みになっていくように思います。